疾走

疾走 下 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

★★★★☆
下巻に手をつける決心がつくまで、結構間が空いてしまいました。上巻読み終わったあとの疲労感、気の滅入りようったらもうね。苦笑。下巻を読む気が持てなかったです。放置しとこうと思った。でも、結果的に、読んでしまいました。読んでよかった、すごくよかった、そう思えたのもすごい。

ああ、そうか、とおまえは気づく。赤ん坊は、生まれるときに母親の血を全身に浴びて外の世界に出てくる。にんげんの一生は、血まみれになることから始まるのだ。

重松清さんの作品はこれが初めてでした。内容そのものだけでなくて、文章力の高さには圧巻されまくり。すばらしい。

とはいえ、過激な性描写に新田殺害。そのあたりは正直、きつかったなあ。窒息しそうだった。映画がR指定になっていないのには驚いたよー。R指定にこそなっていないものの、そこそこしんどいんじゃないかと思う。

シュウジが東京に出てきて、エリと再会してからはすごく楽に読めてしまいました。個人的にはその辺りが評価の分かれ目になった。エリが自分の過去について話すホテルのシーンがすごく好きで、何度も読み返しております。

強い「ひとり」と、弱い「ふたり」が、寝返りひとつでつながりそうな距離を隔てて、それぞれの涙を流しつづける。

救いようのない話、やっぱり好きみたい。