疾走
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/05/25
- メディア: 文庫
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下巻に手をつける決心がつくまで、結構間が空いてしまいました。上巻読み終わったあとの疲労感、気の滅入りようったらもうね。苦笑。下巻を読む気が持てなかったです。放置しとこうと思った。でも、結果的に、読んでしまいました。読んでよかった、すごくよかった、そう思えたのもすごい。
ああ、そうか、とおまえは気づく。赤ん坊は、生まれるときに母親の血を全身に浴びて外の世界に出てくる。にんげんの一生は、血まみれになることから始まるのだ。
重松清さんの作品はこれが初めてでした。内容そのものだけでなくて、文章力の高さには圧巻されまくり。すばらしい。
とはいえ、過激な性描写に新田殺害。そのあたりは正直、きつかったなあ。窒息しそうだった。映画がR指定になっていないのには驚いたよー。R指定にこそなっていないものの、そこそこしんどいんじゃないかと思う。
シュウジが東京に出てきて、エリと再会してからはすごく楽に読めてしまいました。個人的にはその辺りが評価の分かれ目になった。エリが自分の過去について話すホテルのシーンがすごく好きで、何度も読み返しております。
強い「ひとり」と、弱い「ふたり」が、寝返りひとつでつながりそうな距離を隔てて、それぞれの涙を流しつづける。
救いようのない話、やっぱり好きみたい。